第80回 ちょこのちょっと不思議な話。
【記憶喪失の女】
職場にちょっと不思議な女性がいます。
30代の独身女性で、風船のように痩せたり太ったりするので、オモチ。
そのオモチ、2年程前急に、
「仕事変わりたい」
と、言いだしました。
人間関係のもつれかと思ったのですが、給料面で不満があったようでした。
「新しい職場はどういう所がいいの?」
と尋ねると、
「対面販売がしたい。
一番理想は、ケーキ屋さん」
とのこと。
オモチは美人さんなので、それも悪くないと思っていましたが、もちろん口には出しません。
ある日、仕事で遠出をした時、某スーパーで休憩していましたら、目の前でたこ焼きの美味しい匂いが漂ってきました。
その場にいた職場の人達は、
「食べたい食べたい」
と言うので、太っ腹なちょこちゃん、並んで買ってあげました。
すると、たこ焼き屋の販売員募集の張り紙が見えました。
その場にいた職場の人達(ちょこも含めて)がオモチに、
「たこ焼きの販売員なら、対面販売やで」
と、面接だけでもお願いしたら?と煽ったのです。
時給もたこ焼き屋のくせに高給なのです。
並んでわかったのですが、たい焼き、クレープもやってるお店でした。
オモチも、その時はその気になって、家族に相談すると言いだしたのです。
帰りの車の中で、落ち着いて考えたのでしょう、ちょこに、
「今のスーパー、家から遠いから別の所探すわ」
ちょこも、賛同しました。
翌日、オモチがちょこに、
「昨日のたこ焼き屋さん、家から遠いから別の所探す事にするわ」
と、前日と同じ事わざわざ言いに来たのです。
ちょこは、
「わかった」
とだけ言いました。
しばらくしてちょこ、社長にお叱りを受けました。
「ちょこちゃん、オモチに転職勧めてるらしいやんか。
今、オモチ新しい職場探してるって聞いたで」
オモチ、たこ焼き屋の件以降、新しい仕事場を探してケーキ屋の面接を受けたそうです。
結果は不合格。
落ち込んで、職場放棄していると、家族から連絡が入ったらしいのです。
ちょこ、たこ焼き屋の時は煽ってみたけど、ケーキ屋の面接の件は知りませんでした。
ケーキ屋の面接に行く前に誰かに相談したらしいのですが、その相手がちょこだったそうです。
ここではっきり言いますが、ちょこ、一切相談されてませんから!!
職場にはオモチと同年代の女性が沢山いたので、仲の良い女友達(カイガ)がいました。
オモチは、子供の頃絵画教室に通っていたようで、今でも絵が大好き。
ちょこも何枚か絵を見せてもらいました。
確かにちょこよりお上手です。
カイガも絵が好きということで仲良くなったようです。
カイガは、油絵を描く本格派。
プロ並み。
もちろん、見せてもらったのですが、オモチの絵と比べると、素人と玄人。
ある日、カイガがちょこに、
「今度、オモチと一緒に美術館に絵を見に行くんだけど、一緒に行かない?」
と、誘ってきました。
理由を聞くと、
「オモチと一緒に行きたくない。
でも、絵は見たい」
とのこと。
その日はちょこ、用事があったので行けませんと、丁寧にお断りしました。
結局、職場のランラン先輩を誘って3人で行ったようです。
オモチとカイガは、仲の良いお友達だと思っていましたので驚きました。
そのカイガが、仕事を辞めたのは昨年でした。
オモチは、カイガが辞めてからかなり落ち込んでいました。
カイガと仲の良かった後輩(ハッパ)が、
「カイガさんが会社辞めた本当の理由知ってますか?」
と、ちょこに尋ねてきました。
「家の都合って聞いてるよ」
と答えると、
「それも少しあるけど、本当はオモチさんとの関係に疲れてたみたいです。
先日会った時、色々話してくれました」
オモチとカイガは、お互いの家に遊びに行く程の仲良しさんで、毎日電話やラインをしていたそうです。
「毎日、職場の人の悪口を延々に聞かされてたらしいですよ」
例の美術館に行った日の事でした。
その日は、オモチとカイガとランラン先輩の3人の他に、カイガの美術大学時代の教授(男性)とも待ち合わせていました。
普段から遅刻の多いオモチでしたので、カイガは念押しで時間厳守をお願いしていたのですが、案の定遅れてきました。
教授を1時間以上待たせることになりました。
美術館を一通り見終わった後、教授含めて4人で喫茶店に入りました。
教授は、この頃小学生以下の子供達の絵画教室を開いていました。
カイガは、
「今後も絵を続けるつもりなら、人に絵を教えるのも上達の一つ。
今度、教室に遊びに来ないか?」
と、教授に誘われました。
突然のお誘いに躊躇していると、オモチが、
「子供なら私にも教えることができるわ。
私も一緒にいいですか?」
と自分をアピールするのに必死。
教授は、オモチに、
「一度絵を見せてほしい」
と言うと、オモチはケータイに入ってる自分の鉛筆画を見せようとしました。
教授は、
「今度きちんとした物を見せて下さい」
と優しく制しました。
この日の出来事があって、カイガはオモチとの付き合いを断ち切るために、会社を辞めたようです。
ハッパからちょこに質問がありました。
「オモチの絵って、大学の教授に評価してもらえるようなモノなんですか?」
ちょこ、絵のことはよくわからないけど、
「たしかにオモチの絵は上手やで。
けど、鉛筆画(デッサン)しか見たことないねん。
カイガは、大学時代に海外で賞も取ってる。
カイガとオモチの絵は、レベルが違いすぎると思うで」
と言うと、なぜかハッパは大きく頷いてました。
カイガが辞めた後、職場での友達探しを始めたオモチは、ハッパとも仲良く話をするようになりました。
ある日、ハッパが買ったカーディガンがダボダボに大きすぎて、ちょこにあげると言うのです。
ちょこは、ハッパより体が大きいのですが、ニット類は着ないのです。
「ニットなら、ランラン先輩の方が似合うと思うわ」
と、ちょこの横にいた先輩に振りました。
先輩も、
「いただけるならなんでもいただくよ」
との事。
その話を聞いていたオモチが、ハッパに、
「そのカーディガン見せてほしい」
と言ってきたのです。
ランラン先輩は、自分よりオモチの方が上手に着こなすんじゃないかと言いながら、ハッパに、
「オモチに貰ってもらってよ」
と言いました。
ハッパも、
「じゃそうする」
と、ここで、このカーディガンの話は終わった筈でした。
しばらくして、オモチがちょこに、謝りに来ました。
「ちょこちゃんのカーディガン、私には大き過ぎるし、色も変やったから捨ててん」
捨てた?
ちょこのカーディガンを?
「私が着なかったら、ランラン先輩に渡してって言ってたけど、こんなん先輩にも似合わないわと思って、ゴミ袋に入れて部屋に置いてたら親が勝手に捨てたんよ」
へ?
粗大ゴミ?
ランラン先輩?
あ、ハッパのカーディガン、、、
「オモチ、それはちょこのカーディガンじゃないよ。
ハッパのカーディガンやで。
勝手に捨てたんか?」
とは、なんだか怖くて言えませんでした。
オモチ、更にこんな事言ったのです。
「ランラン先輩にも悪いと思って、私の帽子渡しといたから」
ランラン先輩に確認すると、
「前に、オモチから帽子貰った事あるよ。
ずっと前の話やで」
オモチ、頭大丈夫か?
以前、職場の女子だけで遊びに行った事がありました。
車の中はギューギュー。
帰りの車の中は、皆疲れ切っていました。
誰かが会社の話を始めたのです。
会社の不平不満から社長の悪口大会になってしまいました。
同乗のちょこは、ウトウトしていて、全く会話には入らかったのですが、その夜社長から電話がありました。
「ちょこちゃん、何があったんや?」
何があったんですか?
ちょこの方が知りたいです。
「帰りの車の中で会社の悪口大会になって、しんどかったって、たった今オモチから電話があったぞ」
え?
知りません。
すみません。
翌日、再び社長に呼び出されました。
「今な、カイガから昨日の帰りの車の中で、オモチが俺の悪口延々に言うてたって聞かされてんけど。
どういうことやねん。
どっちがホンマやねん」
ごめんなさい🙏社長。
ちょこ、本当に知らないんです。
その翌日、ちょこはオモチに呼び出されました。
「私、先日遊びに行った時、皆んなが社長の悪口言い出したやろ?
気になって、夜社長に電話したのよ。
社長には、皆んながこんな事言うてたよって全部報告しといたから」
皆んなって誰?
ちょこも含まれるの?
怖い怖い。
本人、全く自覚がない様子で、
「社長と私は兄弟みたいで、何でも言える関係」
とか言って甘えています。
社長も男ですから、美人に甘えられると弱いみたいですね。
ようわからん関係が続いています。
そんなオモチ、最近また会社を辞めたいそうです。
もう、辞めたらええねん。
マジ、辞めてくれ❗️
言うとくけどな、今回はちょこ相談されてないからな❗️
本日のBGM
GUMI『ドーナツホール』🍩
ボカロ曲。
米津玄師作詞作曲。