第37回 ちょこのちょっとした暗い話
【虐待】
ちょこが学生の頃、夏休みの1ヶ月間、一人暮らしの大阪市内のおばあちゃん(たらこさん)家に泊まりに行っていました。
市内でも田舎の家だし夏場ですので、ベランダや窓は網戸を全開しての生活でした。
夜8時を過ぎると、どこか遠くの方から子供の泣き声が聞こえて来るのです。
夜8時キッチリではなくて、日によって違っていて夜11時過ぎてる日もありました。
最初の1週間位はそんなに気にならなかったのですが、10日2週間過ぎると、だんだんもしかして『虐待では?』と疑うようになりました。
泣き声も幼稚園児〜小学低学年位の男の子だと、はっきりと聞き取れるようになってきました。
とりあえずたらこさんに相談しました。
たらこさんは全く気付いてなくて、しばらく様子をみようという事になりました。
実家のママのかにこさんにも相談しました。
かにこさんはすぐ反応してくれて、泊まりに来てくれた時に泣き声を確認してくれました。
「ホンマやな。
もしかして、ちょこちゃんが言うように虐待かもしれへん。
泣き方が普通じゃないわ」
「警察に通報した方がいいかも」
かにこさんとちょこの会話を聞いていたたらこさんは慌てたように言いました。
「おばあちゃんの家から電話せんといてや。
もし虐待と違うかったらおばあちゃん、ここに住まれへんからな」
そう言うので、かにこさんと相談の結果、たらこさんが言うようにしばらく様子をみようという事になりました。
その間、毎晩毎晩男の子が泣き叫んでいました。
そのうち男の子の泣き声が悲痛な叫び声になってきました。
「ごめんなさいごめんなさい」
と、聞こえる日もありました。
夏休みも残り少なくなってきたある日の早朝(6時頃)、男女数人の話し声で目を覚ましました。
ちょこの寝室は、外の通路に面した6畳の和室です。
外の通路に、数人の男女がヒソヒソと何やら話をしているのです。
『なんやねん(怒💢)』
寝ようと思いましたが、話し声でなかなか寝られません。
その内、話の内容がわかってきました。
例の男の子の泣き声についてでした。
はっきり出所がわかっている内容でした。
ちょこは、聞き耳を立てて聞いていました。
「とりあえず、行ってくるわ」
と男性の声がしたと思ったら、玄関のチャイムが鳴りました。
ピンポ〜ン❗️
『へ?』
たらこさんの家の玄関のドアのチャイムが鳴ったのです。
つまり、ちょこが寝ている部屋の外で、ヒソヒソしていた人達がチャイムを鳴らしたのです。
『何何何、なんなの〜?』
ちょこは、たらこさんを起こして玄関に出てもらいました。
玄関の外にいた男性は、この付近をまとめている理事長さんでした。
夏休みといっても、社会人には平日です。
出勤前に理事会の皆さんが、集まって来られたようでした。
「先日、僕の家に男性から電話がかかってきたんですよ。
名前を尋ねたら、ココの部屋の番号とAさん(たらこさんの苗字)と仰ったんです」
たらこさんは即答しました。
「この家には男性は住んでまへんで」
たらこさんの旦那様(ちょこのおじいちゃん)は亡くなっています。
たらこさんは一人暮らしです。
「はい。知っています。
イタズラ電話かもと思ったんですけど、とりあえず報告に来たのです」
「で、、、何の報告ですのん❓」
たらこさんは先が知りたくてウズウズしているようです。
聞き耳を立てているちょこも同じです。
「既にお気づきだと思うんですけど、、、毎晩夜8時過ぎると男の子の泣き声が聞こえていたと思うんですけど、、、」
たらこさんの返事は、
「知りまへんけどな」
「あ、、、ご存知なかったですか?」
「へえ」
『おお〜い、たらこさん、嘘はアカン』
たらこさん、昔ちょこに「嘘つきは泥棒の始まりや」言うたやん。
「虐待ではないかと、オタクの苗字を語った男性が電話してきたのです」
たらこさんは無言でした。
理事長さんの話は続きました。
「実は、この付近の住人からもそういう話が以前から出ていたので、泣き声の主(男の子)を探していたんです」
『そんなん、警察の仕事やろ』
ちょこは一人で突っ込んでました。
「男の子が泣く方向からこの子だろうなぁーーーーっと、目星を付けて、泣き出した時間に家の玄関のチャイムを鳴らしたんですよ」
「はぁー、、、」
たらこさんの返事は、、、関心なさそうでした。
「人の良さそうな30代のご夫婦だったんですよ」
「はぁー、、、」
「毎晩毎晩泣き声が外まで聞こえてますよ。って言ったら、すみませんでした。って、ご夫婦揃って謝っておられました」
「はぁー、、、」
「お気づきになりましたか?
昨夜は、泣き声無かったんですよ」
『へ? そうなん? 知らんかった』
ちょこは気づきませんでした。
「反省されたみたいですよ。
電話のお礼を兼ねて報告させていただきました」
理事長さん以下数人は、言うだけ言って帰って行きました。
たらこさんはこの件に関しては、全く興味がなかったのでしょう。
「なんでこんな時間に報告しにくんねん❗️
わては眠いっちゅうねん❗️」
ってブツブツ文句言って二度寝(ふて寝)していました。
『そっちーーーー❓』
って、ちょこは一人で再突っ込みしました。
男の子の家族は、最近建ったマンションに引っ越して来たばかりだったそうです。
ちょこはその日の内に、実家に帰りました。
早くかにこさんに報告したかったからです。
かにこさんも「良かったね」って言ってました。
その後のたらこさんの話。
本当に、泣き声はピタリと無くなったそうです。
ちょこが実家に帰ってから、たらこさんも時々ベランダに出て、泣き声が聞こえてくるかチェックしてたようですヨ。
『やっぱり、たらこさんも気にしてたんやな〜』って思いました。
2〜3ヶ月もすると、再び男の子の泣き声が聞こえてくるようになったそうです。
ちょこに言うと、心配すると思って黙っていたと言ってました。
「もうすぐクリスマスやいうのに、この男の子には楽しいクリスマスが来るのかな❓」
たらこさんはそう思ったそうです。
正月明けて、再び理事長さんからたらこさんに報告があったそうです。
「警察が介入することになって、しばらくして家族は夜逃げされたみたいですわ」
夜逃げって、、、。
今頃この男の子、元気かな❓
クリスマス前になると思い出す話です。
暗くなりました。
もっと暗くなる話しますね。
ちょこの妹(たばこちゃん)が、ちょこの事「お姉ちゃん」って呼んでくれていた可憐な小学生の頃の話です。
たばこちゃんが「歯が痛い」と言うので、ちょこが歯医者に連れて行くことになりました。
治療が終わって、帰りのバスを待ってる間にたばこちゃんが「痛い、痛い」と言い出したのです。
最初は可愛くシクシク泣いていたのですが、その内、
「痛い、痛い❗️わーーーーーーん❗️❗️」
と大泣きし始めたのです。
あまりにも大声で泣き叫ぶので、通りすがりの人達は、ちょこがいじめてるように見えたのでしょうね。
「お嬢ちゃん、どうしたの❓」
と、優しい声で問いかけて来るのですが、ちょこには恐っそろしい顔で睨むのです。
ちょこも『泣くなや〜』と半泣きでした。
既にバスを待っていたお客さん達は、原因をご存知なので説明して下さってました。
近所の方も集まってきました。
「もう一度歯医者に行って、痛み止めもらっといで」
とか色々言ってくれますが、大泣きしているたばこちゃんの横でどうしていいかわかりませんでした。
ちょこも大泣きしそうでした。
その後、たばこちゃんは、
「二度と歯医者に行きません❗️」
と、宣言をしました。
近年、ボロボロになった奥歯の治療の為に歯医者に行って、差し歯を作ったたばこちゃん。
「合わへんねん」
と言って使っていません。
差し歯は、入れ歯ケースに入れたまま洗面所に放置してあります。
かにこさんも差し歯なので、洗面所には2個の入れ歯ケースが仲良く並んで置いてあります。
たばこちゃんのお友達が来て、2個の入れ歯ケースを見て、不思議そうに、
「コレ、誰の❓」
と、聞いたそうです。
「コッチはかにこさんのん。
コッチはちょこちゃんのん」
たばこちゃん❗️
嘘つくな❗️❗️
「嘘つきは泥棒の始まり」
って、たらこさんが言うてたの一緒に聞いてたよな❗️❗️❗️
今週のBGM
KinKi Kids『愛のかたまり』