tuon2366chocoのブログ

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第57回 ちょこのちょこッとした童話

【灰かぶり・後半】

 

次の朝、王子達一行は金の靴を持って各家を回りました。

そしてとうとう、灰かぶりの家にもやって来ました。

「この金の靴にぴったり合う人を、僕は妻にするつもりだ」

それを聞いて、姉達は喜びました。

というのは、2人共綺麗な足をしていたからです。

上の姉がその靴を持って自分の部屋へ行き、履いてみようと試みました。

しかし、親指が大きくて、足が入りませんでした。

金の靴が小さすぎるのです。

すると母親がナイフを渡して、こう言いました。

「親指を切っておしまい。お后になったら、自分の足で歩くことはないからね」

娘は親指を切り落として、足を小さな靴の中へ押し込みました。

それから、歯を食いしばって痛さをこらえながら、王子の所へ出て行きました。

すると王子は上の姉をあの時の女性だと思い、馬に乗せてお城に向かいました。

ところが、2人がハシバミの木のお墓の側を通った時です。

鳩が2羽、ハシバミの木に止まっていて、声高く鳴きました。

「くーくーくー、くーくーくー、

王子様、よーく金の靴をごらんなさい。

靴の中は血がいっぱいです。

靴が小さすぎるんですよ。

本当の花嫁は、まだ家の中にいます」

王子が娘の足に目をやると、血が溢れ出ているのが見えました。

王子は馬の向きを変え、上の姉を家へ戻しました。

「この人は、本当の花嫁じゃない。もう一人の娘にこの靴を履かせてごらん」

と言いました。

そこで下の姉が金の靴を持って、自分の部屋へ行きました。

爪先は上手く靴に入ったのですが、踵が大きすぎて入りませんでした。

金の靴が小さすぎるのです。

すると母親がナイフを渡して、こう言いました。

「踵を少し切っておしまい。お后になったら、自分の足で歩くことはないからね」

娘は踵を少し切り落として、足を小さな靴の中へ押し込みました。

それから、歯を食いしばって痛さをこらえながら、王子の所へ出て行きました。

王子は、下の姉をあの時の女性だと思い、馬に乗せ一緒にお城に向かいました。

2人がハシバミの木の側を通りかかると、鳩が2羽木に止まっていて、声高く鳴きました。

「くーくーくー、くーくーくー、

王子様、よーく金の靴をごらんなさい。

靴の中には血がいっぱいです。

靴が小さすぎるんですよ。

本当の花嫁は、まだ家にいます」

王子が娘の足を見下ろすと、血が靴から流れ出て、白い靴下が上の方まで真っ赤になっているのが見えました。

そこで王子は馬の向きを変えて、下の姉を家へ戻しました。

「この人も本当の花嫁じゃない」

と王子は言いました。

「他に娘はいないのか」

「おりません」

と娘達の父親が言いました。

「もっとも、死んだ家内が残したのが1人いるにはいますが、チビのできそこないで、灰まみれの汚い娘です。とても王子様の花嫁になれるような者ではありません」

「いいから、その娘をここへ連れて来なさい」

と王子が言いました。

今度は、母親が言いました。

「とんでもない。あれは汚くて、とてもお目にかけられるような者ではありません」

それでも王子は、

「是非その娘に会いたいのだ」

と言い張りました。

母親は、仕方なく灰かぶりを呼びました。

灰かぶりはまず手と顔を綺麗に洗ってから、王子の前へ出て、深くお辞儀をしました。

王子が金の靴を灰かぶりに渡すと、灰かぶりは台に腰を下ろし、重い木靴から光り輝く金の靴に履き替えました。

すると金の靴はぴったり合いました。

灰かぶりは、立ち上がって王子の前に歩み寄りました。

王子がその顔をよく見ると、一緒に踊ったあの時の綺麗な娘だということが、はっきりとわかりました。

「この人だ❗️ この人が本当の僕の花嫁だ❗️」

と大きな声で言いました。

継母と2人の姉はびっくり仰天し、真っ青になりました。

王子は灰かぶりを馬に乗せ、お城に向かいました。

2人がハシバミの木の側を通りかかると、白い鳩が2羽声高く鳴きました。

「くーくーくー、くーくーくー、

皆さん、花嫁の足をごらんなさい。

金の靴がぴったり。

王子様が、本当の花嫁をお城に連れて行くよ」

鳩はそう鳴き終わると、2羽共舞い降りて来て、1羽は灰かぶりの右肩に、1羽は左肩に止まりました。

そしてそのまま、そこにじっとしていました。

 

翌日は王子と灰かぶりの結婚式が行われる事になりました。

そこへ腹黒い姉達がやって来ました。

灰かぶりに取り入って、幸せのおこぼれにありつこうと考えたのです。

花嫁と花婿が教会へ行く時、上の姉は2人の右側を歩き、下の姉は左側を歩きました。

すると2羽の鳩が飛んで来て、それぞれの姉達の片方の目を突き出しました。

式が終わり、花嫁と花婿が教会から出て来た時、今度は上の姉が左側を歩き、下の姉が右側を歩きました。

するとまた、2羽の鳩が飛んで来て、それぞれのもう一方の目を突き出しました。

こうして姉達は、これまでの意地悪の罰を受け、一生目が見えなくなってしまいました。

 

(終わり)

 

決定版 完訳『グリム童話集2』野村泫 訳

21「灰かぶり」より

 

(前半同様、お話を読み易くする為、ちょこが色々手を加えております。

原文のままではありません)

 

 

 

前半後半に分けてグリム童話『灰かぶり』を、投稿しましたが、いかがでしたか?

 

読んでいただくとおわかりになると思いますが、『シンデレラ』です。

 

でも、皆さんが知っている『シンデレラ』と、なんか違いますよね。

今回の『灰かぶり』には、カボチャの馬車も魔法使いも出てきませんでしたからね。

 

『灰かぶり(シンデレラ)』は、「グリム童話集」の中の一話です。

 

そして、ご存知の方もいらっしゃると思いますが「グリム童話集」には、初版から第7版まで存在します。

今回投稿した『灰かぶり』は、第7版の日本語訳です。

 

ディズニー映画の実写版『シンデレラ』の放映翌日、職場で『シンデレラ』がちょっと話題になりました。

 

「ちょこの知ってる『シンデレラ』は、チョット怖い大人の童話なんやで〜」

 

と、皆んなの前でウンチクを語りたかったのですが、楽しくお話しているのに話の骨を折るのも悪いと思い、ここに投稿して吐き出すことにしました。

 

グリム童話集」について少しウンチクを語ります。

 

グリム童話集」の正式なタイトルは、『子供と家庭のメルヒェン集』と言います。

「メルヒェン」とは、ドイツ語で「昔話」という意味です。

 

グリム童話集」は、グリム兄弟(兄ヤーコプ、弟ヴィヘルム)が創作した童話集と思っている方が大勢いらっしゃるかと思いますが、グリム兄弟は、「昔話」を集めて出版しただけで、童話の創作はしていません。

 

とは申しましても、初版から第7版の間にお話に手を加えられて、整理・加筆されて現在に至っています。

なので、一つの物語にいくつものパターンがあり、内容も微妙に違っていたりします。

 

今回の『灰かぶり(シンデレラ)』もその中の一つの物語です。

実の父親と継母は意地悪だったけれど、2人のお姉さんはどちらかというと被害者ですよね。

(両目をくりぬかれたり、、、)

結婚式の後、シンデレラは王子様と本当に幸せになるのかしら? な〜んて考えちゃいますよね。

 

さて、『シンデレラ』という物語には、もっと恐ろしい『シンデレラ』が存在するのです。

 

もちろん、ちょこのブログに投稿しますので、楽しみにしていて下さいね。

 

 

《追記》

 

6月20日に投稿予定が、7月も半ばになってしまいました。

すみません…

 

次回は、7月20日頃の投稿予定です。

え?

約束しちゃっていいのかって?

あーーー、『予定』は『未定』ということで、、、

すみません。

 

一応、投稿できる状態にはなっているのですが、急遽変更するかもしれません。

 

ま、気長に待っていて下さいね。

ということです。

すみません。(3回目)

 

 

 

本日のBGM

中村中(なかむらあたる)『真夜中のシンデレラ』